並木道に呼応するファサード
この建物の周辺は、京浜工業地帯の一角として、永く煤煙に濁った工場地帯というイメージがあった。しかし今、駅前の大きく育った並木道には、そうしたイメージを払拭し、都市の景観を変容させる大きな力を感じさせるだけのインパクトがある。問題は、そうした景観の流れを周囲の街並みがどう受け止め、発展させるかである。
この並木道に面する建物には、こうした景観に呼応した形態づくりが求められていた。並木道に面する外観は、木々の幹の重なりと、葉々の間を抜ける木漏れ日をかたちにしている。コンクリートの幹は、生命のもつ力強さと、自然と共立する人間の創造性の産物である人工物(建築)のもつ力強さとを合わせて表現し、そこに穿かれた不定形の穴や、ルーバーの隙間を通して内部の温かみに溢れた色彩がこぼれだす。駅前に住むという都心性と居住性を合わせて表現している。