パースペクティヴな空間構成
計画地は奥の深い長方形の敷地である。東端の奥に伸びる私道の存在がさらに奥行き感を感じさせる。ここにこの奥行き感、遠近感を強調した、ヴァチカンのスカラレジアのような空間構成の建物を構想した。
スカラレジアはただ単に遠近法を強調した空間ではない。それは道程の長さを強調するとともに、目標地点もはっきりと明示されている。その道程を進む人間を背後から見ていると、その遠近法的な仕掛けにより、その人間は進むにつれ次第に大きくなって見える。それは容易に行き着くことのできない空間の奥深さと同時に、道程を進むことによる精神的な高揚を示している。
当初計画した奥に伸び上昇する階段はなくなり、また遠近法的な仕掛けもないが、私道に平行して奥に伸びるアプローチやコンクリート打ち放しによるストイックなマッスの表現、幾何学的なグリッド空間の中に厳然と区切られた形態等が、空間の奥深さと、精神的な高揚感を表現している。