煽風をかたちにする
山手通り側からビルの隙間をぬって、強い風が目黒台の丘陵地へと吹き上がる。一方障壁のように林立するビルの裏側に沿って吹抜ける風がある。ここではこの二つの風が衝突し、渦巻き状に舞い上がる辻風を生ずる。この小さな計画地の小さな建物は、その旋風によって舞い上げられてしまいそうだ。風が通り抜け、風が舞い上がる、それをかたちにする。
建物の前面は、緑の木立を風が通り抜けるようなライトグリーンに縁どられた透明な皮膜で構成し、曲面で構成された階段の廻りには渦巻く風をさえぎる袖振りの姿を型どった。さらに舞い上がる風の最も鮮やかなイメージは、モンローイフェクト。そして赤。透明な皮膜の頂上に逆三角錐状に乗る赤い屋根によって、舞い上がる風を視覚化する。これは、映画製作者をオーナーとするこのビルにとってもふさわしいイメージかも知れない。