都市の中の「森」
計画地はもともと向山と呼ばれ、渋谷川に面する丘陵地の一角をなしている。なだらかな丘陵地であり、下駄の端状の敷地は周囲からの見通しがきかない。敷地全体は4ヶ所で道路に面しているが、まるで原始の森の中の一本の巨木をその森の中で探そうとするかのように、その直前まで近付かないと、建物の存在に気が付かない。かように、都市空間の「森」の中に埋没した敷地である。
都市の森は針葉樹の「森」か。垂直にそそり立つ巨木の群、天空をおおう枝葉、その間から差し込む陽光が、昼なお暗い「森」の中でそこだけスポットライトを浴びたように浮かび上がる。
針葉樹の「森」の中にGALLERIAのように生まれた吹抜け空間。そして有機的な生態系のイメージを、無機的な金属という対極にあるものに置きかえることによって逆説的に表現し、「森」の中に内在する目には見えない高次の秩序を、整然とした幾何学的パターンによって視覚化する。地形的なアンジュレーションの全てを覆う「森」。大地を割って姿を現す真っ赤なマグマでさえ覆い隠してしまうようだ。