「共」環境[Co-Environment]
―新たな関係性やかたちの創発
人間やそれを取巻く社会の環境は,建築などの人工的なものや自然的なものなどが人間の営みに複雑に絡み合い,その構成要素が相互に影響し合う非線形[nonlinear]の関係を持っている。こうした非線形の関係を利用し、環境の一部に、ある意図した関係性(プログラム)を持ち込むことにより,個々の単なる積み重ねでは生じ得ない,新たな関係性やかたちを総体として創り出すことができる。我々はこうしたプログラムをもち、新たな関係性やかたちを創発する環境を「共」環境[Co-Environment]と呼ぶ。現在,地域文明(文化の集合)の行き詰まりや軋轢が叫ばれるなか,いまこそ文明間の調和と連携と新たな発展のための「共」環境の必要性が求められている。
従来,博物館は個が展示物と対峙する一対一の関係が重視されてきた。エンターテインメントは展示物との関係やそこでおきた事柄や知識を多くの人々と共有することを可能とする。そうした役割こそ、まさしく博物館における「共」環境であり,そこで新たに生み出されるのは,交感する力、交流する力であり、そこで交わされる対話はまさに世界文明そのものについてである。
マザールーフに覆われた空間は,いままでエジプトの裸の大地の上では許されなかった建築や人間の営みの様々な形態や関係性が,新たに生み出される「共」環境空間である。