日常を一歩踏み出す快適性と独立性を持った住まいづくり
地中海沿岸、南フランスのコート・ダジュールやプロヴァンス地方には、パリなどの大都会の人々が、夏などに長期滞在する住居が多くあります。そこは短期リゾートのような非日常の場ではなく、あくまで日常の生活を営む場所なのですが、大都会での日常と比べると、その疲れを癒し、快適な暮らしのできる、一歩踏み出した“日常”の場なのです。
いま、夫婦ともども社会生活への積極的な参加が目立ち始めている現在、まさに社会生活そのものが日常となりつつあります。社会生活の日常の疲れを癒し、快適に暮らすための“住い”には、南フランスの長期滞在型の住居のような、日常を一歩踏み出した、快適性と独立性が求められているのです。
快適性と独立性を高める吹抜け空間と専用ブリッジ
住戸と共用廊下との間には、五層分の吹抜け空間があります。廊下と吹抜けの間にアイ・ストップ(目隠し)ウォールを設けることにより、この吹抜け空間は、公と私の中間領域を形成します。各住戸へは専用ブリッジにて結ばれます。
これにより、各住戸は、通風、採光、プライバシー、防犯等、住環境の快適性と独立性を確保することができます。
南仏を彷彿とさせるアース・カラーを基調とした外観デザイン
南仏、コート・ダジュール、プロヴァンス地方の住まい基調であるアース・カラーを取り入れた外観デザインとします。
パサージュ風の光の
エントランス・アプローチ
B1階のレベルにあるエントランス・ホールへ向かうメイン・アプローチは、周囲の地形を切り通し状にすき取った形状で、上空のみが解放された空間となり、落ち着いた、奥行き感のあるアプローチとなります。
また、左右に列柱を配し、その上にガラスの庇を架けることで、パサージュ風の光のアーケードとなります。
このエントランス・アプローチは、南の道路と、北東の道路とを結ぶ「貫通通路」ともなります。
グリーン・ウォール(緑の壁)のアイ・ストップのあるエントランス・ホール
前面道路と同一レベルでアプローチする、エントランス・ホールは、B1階のレベルとなりますが、通常の階高より50cm高い、3.3mの階高となり、天井高3.0mの空間となります。
オープン・エアの駐車場とほぼ同一レベルで、駐車場とを区切るグリーン・ウォールや、吹抜けを通して、光の降り注ぐ空間となります。
グリーン・ウォール
グリーン・ウォール(ネットフェンスに蔦を這わせたり、ポットを壇上に積み上げた壁)は、緑視率を高め、通風がとれ、視線を適度に遮るため、駐車場の周囲などに設置することにより、住環境とプライバシーの向上に役立ちます。
また道路や敷地境界沿いに設置することにより、都市に生活する人々にも潤いを与え、健康的な都市環境向上に役立ちます。
このグリーン・ウォールは、比較的ローコストででき、メンテナンスを考慮した人工の緑でもその効果は十分図れます。
アイ・ストップ(目隠し)ウォール
共用廊下の住戸側の側面には、アイ・ストップ(目隠し)ウォールを設けます。
これはグリーン・ウォールでもよいし、型ガラスや、ルーバー状のものでもよいでしょう。
これにより、各住戸のプライバシーと独立性が高まります。
グリーン・ルーフ(緑の屋根)
駐車場の上部を、FRPグレーチング等を利用した屋根で覆い、その上にポットに入れた樹木等を配置します。側面を覆うグリーン・ウォールとともに、殺伐とした立体駐車場などの景観を和らげることができます。
屋根にグレーチングを利用することで、工作物として扱うことができ、FRPなどの素材を使うことで、さびなどの汚れで車を汚す心配がありません。
共用部の緑化などエコロジーに関するその他の提案例
共用部の緑化
- 共用廊下の緑化…花の手すり
- 玄関前の緑化…表札とのユニット化
- 歩道沿いのフラワーポットを組み込んだ照明ポール
- 自然素材を利用した仕上げ
省エネルギー
- 省エネメーター…電気、水道など使用料がわかる
- 省エネコンセント…スリープ電源の必要な家電製品などの電源を一括して切ることのできるスイッチ付きコンセント
- 屋上緑化…断熱効果が向上するといわれています。
タイプ・バリエーションがつくりやすいように水廻りを集約
キッチン、洗面、浴室、トイレ等の水廻りを極力集約し、タイプ・バリエーションがつくりやすい間取りとしました。
また、後置き式の収納ユニットを利用すると、部屋の大きさを自由に変えられるフレキシブルプランにも対応が可能になります。
この場合、小梁をなくしたフラット・スラブ(アンボンド構法や、ボイドスラブ構法)を採用すると効果的です。
住戸の中をより広く、一体感あるものに見せる工夫
居室の間仕切りの上部にガラスを入れたり、間仕切りそのものをガラスやガラスブロックにすることにより、部屋―廊下、部屋―部屋間の空間の広がりと、一体感を演出できます。
バルコニー利用を快適に
バルコニーを快適に利用するために、水栓・流し(SK)と物入れを用意し、空調室外機、給湯器とともに、バルコニーの片側に集約し、バルコニーの有効利用を図ります。
ルーフ・テラス
最上階(4階)の住戸は、それぞれ専用階段にて、屋上のルーフ・テラスを有効利用できるようにします。
特に、東西の大型住戸は、リビングと連続して一体利用の可能な中庭を用意し、そこに設けたらせん階段によって、ルーフ・テラスを利用することができます。