台東区建築景観賞 受賞

歴史の気配と芸術・文化の地
計画地周辺の地形を見ると、計画地は城北から皇居に向って迫る本郷台地の端部にあり、本郷台地と上野台地とにはさまれた谷を流れる藍染川が流れ込む不忍池の西端に位置している。
 江戸時代の本郷台地は、尾根筋を通る中仙道と、それに沿って発展した大名屋敷や寺院群によって構成されていた。一方、上野台地は江戸幕府の祈祷寺としての寛永寺がおかれ、谷中の寺院群や不忍池を含めた自然に包まれた聖なる空間、すなわち江戸北辺の大規模な聖域として成立していた。その後、明治時代になると、不忍池を含む上野の森の中に博物館などの文化諸施設が整備され、現在の上野公園の姿に整備されていく一方、計画地に隣接する松平家上屋敷や、加賀前田家上屋敷跡は、東大のキャンパスとして利用されるようになった。
 このように歴史の気配を最もよく感じさせる町であると共に、芸術・文化の最先端の地として発展してきた計画地に建つ本建物は、空間構成、外観デザインに日本の伝統的なデザイン手法を採り入れ、町並みにふさわしいものとした。