都市の中の「谷」
計画地では地形としての「谷」と複数の都市空間の「谷」が一点に集合する。谷と谷との重なり合いで生ずる中心は、いわばマイナスの中心である。ここでは、つねに曲面の反転がイメージされる。それは非線形な系の状態が突然不連続に変化するカタストロフィ的な反転イメージでもある。マイナスの中心が反転すると正の中心となる。
マイナスの中心では、谷を流れ下る流線(情報)は、渦を巻きながら、マイナスの中心へと流れ込む。流れ込んだ「情報」は、現実の空間から「失われ」てしまったかのように見える。
しかしながら、曲面が反転し、マイナスの中心が正の中心となると、そこからは周辺の様々な情報や、それらが重ね合わされて新たにつくられる情報ものどもが、天空へとむかって突出する正のエネルギーへと転化し、迸る。それは周囲から集められた様々な情報(意味)の発信地としてだけではなく、新たな情報(意味)を生成流出する装置ともなる。
それは、大地から天空へと吹き出すエネルギーの象徴でもある。その“柱”を実体化する。大地から岩石が、ついで金属が、そして気体が噴出する。気体は上空に昇るにつれて透明感を増すが、その上昇する気体の最先端にある“雲”の存在が、透明な気体の存在と上昇するエネルギーを視覚化する。