計画地の立地環境
…成長のダイナミックなエネルギー を秘めた立地
計画地は楽清市の臨海ベルト・ゾーンの最先端に位置する。
この臨海ベルト・ゾーンは、計画地北端で陸地がとぎれ、海へと続いている。これを地形的に見ると、計画地は、陸地がさらに北へ、海上へとダイナミックに成長しようとするエネルギーを潜在的に秘めた立地と見ることができる。
さらに計画地は、内陸部の旧市街地と隣接し、それが海方向へと拡大する先端に位置する。
西側で接する旧市街地以外、北側と東側の海(水)、南側の山(緑)という環境要素で囲われた立地環境にあり、これらの恵まれた環境要素を最大限に生かした計画とする。
都市軸の設定
…焦点集中形(focal plan)から線形中心形(linear plan)へ
…景観軸から直交する発展軸への転 換
焦点集中形の都市類型(pattern)は、自然発生的な都市には多いが、一般的に発展性に限界がある。特に今回の計画地のように、周囲が海や山で囲まれた立地ではなおさらである。
一方、線形中心形の都市類型(pattern)は、発展性に優れており、計画的に作られる新しい都市には適している。特に今回の計画地のように、成長のダイナミックなエネルギーを秘めた立地ではふさわしく、海岸線に平行に南北方向へと伸びる軸がそれとなる。
また内陸に隣接する旧市街地から計画地を通り海へと至る軸線は、ボーダーラインとなる海岸線へと至ることから、発展の都市軸というよりは、既存計画にあるとおり、海と新都心・旧市街地との関係を象徴する景観軸として位置付けることがふさわしい。
都市-発展軸を“環境軸”として設定
計画地は都市-発展軸上に山と海という2大環境要素があり、それらに挟まれた形で中心区がある。したがって、この山(緑)と海(水)を結ぶ都市-発展軸を環境を象徴する“環境軸”として設定することがふさわしい。
これから計画される都市において、環境の重要性についてはいうまでもない。地球環境も含めたグローバルな視点での環境に配慮し、環境を都市機能の中にプログラム化していくこれからの都市を象徴するものとして、この都市-発展-環境軸を位置付ける。
“軸”に直角方向に連続するゾーニング
都市-発展-環境軸に対し、直角方向に、並行かつ長方形のゾーンをバーコード状に配列する。
都市の発展とともにバーコード状のゾーンも発展する。
各ゾーンの中心を“環境”を象徴し、都市の発展方向を示す“軸”が常に貫き通すというゾーンごとの都市構造は常に一定に保たれる。
中心の機能がひとつに特化される集中形と違い、中心を貫く軸に、ゾーンの属性に応じた“環境”の特性を設定でき、常に環境とともに発展する都市類型(pattern)が生まれる。
長方形のゾーンとゾーンとの間に道路や都市基盤施設(インフラ)を配置する。
環境のプログラム化
緑
潮風や台風時の強風を防ぐものとして海岸線に平行に緑化帯を設ける。
都市内にも環境軸にパラレルに緑化ゾーンを分散して設ける。
それらの緑化ゾーンは、樹種や粗密の程度、起伏(高さ)などをユニット化し、配置することで、アメニティの向上、環境圧(防風、防火など)の軽減、調整を図る。
風
季節ごとの風向きや強さを考慮し、海岸沿いの緑化帯やパラレルに配置された緑などによって、環境圧の強い時にはそれを和らげ、分散し、その他の時には、風をリズミカルに導風し、アメニティの向上を図る。
水
計画地南側の山沿いに大規模な水域を設け、洪水時の調節池として利用するとともに、水域を中心とした自然環境ゾーンとして自然と親しみ憩う場として活用する。
計画地を通過する河川を利用し、風向きを考慮した温・湿度調整などの環境調整や、親水、水遊、修景などアメニティ向上のために、計画地内に水をリズミカルに配置する。また、水の環境負荷軽減(洪水防止、水質改善等)、利水(中水等)も考慮した配置とする。
大地
水や緑と協調し、大地に起伏を緩やかにつけることで、環境圧(洪水、防風等)を軽減・調整するとともに、変化に富んだ景観や視点を都市の中に与え、ダイナミックな躍動感を作り出す。
この大地の起伏は、都市を建設する上での建設残土を有効に利用する。
環境要素を都市の機能の中にプログラムするとは、環境調節の役割を、建物や道路その他の都市の構成要素と協調しながら配置し、都市の中で満遍なく働かせるということであり、アメニティ豊かな都市空間を創造するということである。
こうした快適な環境に住む人々は、行動も活発となり、ひいては都市の躍動感につながっていく。
楽清市役所の配置の検討
新しい都市につくられる新しい市役所
楽清市に新しくつくられる都市に、新たにつくられる市役所は、新しい都市の建設理念を体現するとともに、楽清市全体の目指すべきあり方を指し示すものでなければならない。またそれにふさわしい場所に立地することが必要である。
新しくつくられる都市の建設理念は、グローバル化に対応し、環境と調和したまちづくりである。そしてこれからの楽清市が目指すあり方とは、環境に配慮し、文化性が高く、安全で、人々が快適に暮らすことができ、経済活動がより発展する都市、である。
新しい市役所の配置
以上のような市役所のあり方をもとに、そのふさわしい場所をシュミレーションした結果、“都市-発展-環境軸”上の北端がもっとも適した場所として提案する。
環境重視の象徴的配置
環境を都市のプログラムに取り込む新しい都市の理念に適した市役所の配置は、もっともふさわしい環境を象徴する“環境軸”上とする。
発展する未来を象徴する配置
新しい都市のパターンは、発展を重視した線形中心形である。それを象徴する市役所の配置は、焦点となるような立地は望ましくない。発展する都市の最先端で、未来の方向性を指し示す環境軸上の北端に配置する。
市街地の北側への配置
市役所と市街地のあり方は、市街地の北側に立地し、市役所の南面が市街地に面するあり方が望ましい。環境軸上の北端はこの条件も満たしている。
ゾーニング
計画地は基本的に東西に細長い長方形のゾーンが、バーコード状に南北に連続するゾーニングとする。
計画地南側の山と調節池を利用し、自然公園ゾーンとする。
東側海岸線沿いの臨海部はリゾートゾーンとし、バーコード状の各ゾーンとの交差部には、それぞれの用途に関連したリゾート施設を配置する。
スポーツゾーン
自然ゾーンに近接してスポーツゾーンを設ける。ここではスポーツ施設の廻りを川と調節池をかねた水域が取り囲み、水をふんだんに取り入れたゾーンとする。スタジアム、サッカー場、全天候型スポーツ施設などを計画する。
高級・低層住宅ゾーン
スポーツゾーンの北側には、自然環境をふんだんに取り入れた高級・低層住宅ゾーンとする。特に環境軸と交差するエリアには戸建て住宅を中心に、より自然環境を多く取り入れる。また臨海リゾートゾーンとの交差部には、住宅系との関連の深いコテージを中心とした宿泊リゾート施設を配置する。
商業・業務ゾーン
景観軸の両側は、商業・業務ゾーンとする。リゾートゾーンとの交差部には、商業・業務との関連の深い見本市会場等の施設を設ける。また景観軸の東端には、景観のシンボルとしての大噴水を設ける。
都市型高層住宅ゾーン
商業・業務ゾーンの北側には、高層住宅を中心とした都市型の居住ゾーンを設ける。リゾートゾーンとの交差部にはホテルなどを配置する。
行政・文化ゾーン
市役所を中心としたゾーンは、行政・文化ゾーンとし、美術館・博物館・学校等を配置する。リゾートゾーンとの交差部には、水族館などを計画する。
リゾート型高層住宅ゾーン
計画地北端には、海の眺望を楽しむリゾート型の高層住宅ゾーンを設ける。リゾートゾーンとの交差部には、フィッシャーマンズワーフ等の商業施設を設ける。
景観計画
計画地の都市景観は、環境軸を中心に、水、緑、大地などの環境要素と、各施設などの人工物をリズミカルに配置し、都市の躍動のリズムを感じさせる景観構成とする。
自然的なものと人工的なもの、オープンな空間と密度の高い空間、背の高いものと低いもの、植栽の樹種や形状、木の秩序ある植え方とナチュラルな植え方、静なる水と動的な水、広い水面と狭い水面、人工的な水際と自然的な水際、舗装材の材質や色合い、直線的な形状と曲線的な形状等々を、柔軟に組み合わせ、変化に富んだ、ダイナミックな景観を創り出す。
環境計画
計画地南端に調節池をかねた大規模な水域と山の豊かな森によるナチュラルな環境と景観を主体とした自然ゾーンを設ける。
この自然ゾーンから北へ伸びる環境軸は、緑や水をリズミカルで規則的に配置した都市的な景観とする。
各ゾーン内の緑化や水域は、環境軸にパラレルに配置し、潤いとアメニティの高い都市環境をつくる。
臨海部のリゾートゾーンは、バリアリーフのようなイメージで水域を導入し、安心して水に親しめるリゾート環境を作り出す。
交通計画
南北方向に走る広域交通路にその東西を挟まれた計画地は、その広域路と広域路を結ぶバーコード状の長方形のブロックとブロックの間に地域内幹線道路を配置する。
計画地の駐車場配置は、各施設ごとの分散配置を基本とし、駐車場利用の渋滞を緩和する。
計画地で計画される各施設の需要に応じ、その地下に駐車場を配置する。
市役所
二本の高層棟を東西に並べ、南側の市街地に面する配置とする。
この高層棟と高層棟は、空中において半球状の議会棟によって結ばれ、壮大さと軽快さを表現する。
二本の高層棟の低部は、東西に伸びるエントランスホールと市民のためのサービス施設で構成され、建物の北と南に広がる広場に最大限の長さで面している。
建物の南側に広がる三角形状の広場は、夏の日差しを遮るパーゴラで覆われ、その先端には円錐状のタワーが配置される。この市民ギャラリーとして利用される円錐状のタワーは、発展-環境軸上のランドマークとして、夜は光のタワーとして未来に向かう発展性を象徴する。
その他の外観はシンプル(simple)なデザインとして、全体の調和を図る。